2022年10月15日 11:25
「クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ」展が東京で - 歴代の作品が一堂に、日本との関係にも着目
同時にこのコレクションは、第二次大戦下、ドイツ軍によって占領され弱体化を強いられることになったパリ・モードを、ふたたびファッションの首都へと復帰させることになる。
このように、クリスチャン・ディオールの原点であるとともに、戦後のパリ・ファッションの原点であるとも捉えられる「ニュールック」は、メゾンの歴史においてつねにクリエーションの源泉となってきた。会場では、1947年の「バー」スーツを筆頭に、歴代のクリエイティブ ディレクターによって再解釈されてきたドレスなどを目にすることができる。
夢と形
過去の優雅さを夢見て、それを優雅なフォルムへと具現化する──ここで夢見られたエレガンスは、しかし、決して曖昧なものではなく、明晰な構築性に支えられていた。たとえば、ドレスのファブリックにはチュールを裏打ちし、コルセットはウエストを絞ってバストを押し上げる。スカートもヒップを押し出し、全体として立体的・曲線的なシルエットを描きだす。いわばエレガンスの夢は、建築的な意志に支えられていた。
また、過去を夢見るとはいっても、そこには現代的な感覚が働いている。
ふたたび「バー」スーツを引くならば、それは確かに、19世紀末から20世紀初頭にかけてモードから消えかかったコルセットを用いてはいるものの、クリノリン・バッスルスタイルなどに見られる重厚な装飾性からは距離をとり、現代的なカッティングやテーラーリングによる簡潔なフォルムに仕立てられている。