2022年7月3日 12:00
一度発した言葉は取り戻すことはできない 言葉は投げるものではなく、手渡すように
吉元由美の『ひと・もの・こと』
作詞家でもあり、エッセイストでもある吉元由美さんが、日常に関わる『ひと・もの・こと』を徒然なるままに連載。
たまたま出会った人のちょっとした言動から親友のエピソード、取材などの途中で出会った気になる物から愛用品、そして日常話から気になる時事ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関するトピックを吉元流でお届けします。
言葉のちからを手渡すように
言葉には、その言葉通りの現実を起こす不思議な力、言霊があると信じられてきました。
言霊と聞くと、何やら呪術的なイメージを持つ人もいるかもしれませんが、その言葉にちゃんと意味がこもっている……と捉えてみてください。
しきしまの大和の国は言霊の幸はふ国ぞ真幸くありこそ
(大和の国は言霊によって幸いがもたらされる国です。どうぞご無事で行ってらっしゃい)
これは柿本人麻呂が船出をする友人を見送ったときに詠んだ歌で、万葉集に収録されています。
「どうぞご無事で」という言葉に、その旅が無事であるよう言霊の力をこめたのです。このようにいにしえの人々は言葉の力というものを大切にしてきました。
その精神は、多くの美しい日本語の表現にもつながっているように思います。