2022年10月16日 10:00
忘れてもいいことは忘れていく 忘れることは、自分を楽にしてくれることもあるかもしれない
いまはもう味わうことのない気持ちが綴られているのを読むと、遠い日の自分が愛しくなります。
そんな日記の中に、ぽっかりと記憶から抜け落ちた出来事について書いてありました。それはパリに住んでいる友人とのことだったのですが、私はそれを初めてページを開く小説のように読みました。
その出来事について、すっかり忘れていた自分にも驚いて、何度も何度も読み返しました。でも、遠い日の記憶の尻尾をつかまえられない。
そして思い出したのが、その話を聞いたイタリアン・レストランと、オーダーしたイベリコ豚の生ハム。そして「夜は会えないから赤ワインを飲もう」という友人の言葉でした。
何かの形でしるしを残す。備忘録。思うよりも早く、時は過ぎていきます。
昨年から5年日記をつけ始めました。1日数行の小さな日記帳は、何年か前にニューヨークのソーホーの文具店で求めたもの。
同じ日付のページにある1年前の日記を読み、その日のことを綴りながら、いまここにいる自分と向き合う。
時を重ねていく自分を感じながら、1日を終える。人生の折り返し地点はとうに過ぎてしまったのですから、1日という時間の手触りを味わいながら過ごすのも悪くありません。