『スカーレット』三林京子が明かす“リアル大久保さん”ぶり
私が物心ついたころ、父に手を引かれて師匠の楽屋にうかがったりして。『米朝のおっちゃん』呼んでましたからね」
以来、公私にわたって親交があった米朝一門が総出演する芝居が、京都の南座で上演され、三林さんも助演することに。’97年の夏のことだった。
「落語家の皆さんは内弟子時代に日舞や長唄、鳴物を稽古して、舞台で芝居もする。それなのに女優の私が落語がでけへんのは悔しい、そう思ったんです。それで、思い切って師匠に『落語を教えてほしい』と頼み込んだんです」
すると米朝は、おもむろにこう言った。
「はじめにな、『叩き』というものをするねん」
叩きとは見台を張り扇と小拍子でリズムよく叩きながらまくしたてる、上方落語の前座噺のこと。
「これが難しい。
よう叩けたと思うたら口が回らんし、うまいことしゃべれたと思うたら叩けてない。皆は10代でやるから覚えられますけど、当時私はもう47歳で(苦笑)。それで、親しかった(桂)ざこば兄ちゃんに相談したら『そらあ、ちゃあちゃん(米朝のこと)、根を上げさせようとしてんねん』と。それ聞いて『なにくそ!』と、必死に覚えましたよ」
どうにかこうにか習得し、米朝に披露すると、目を丸くして驚き、こう褒めてくれた。