『スカーレット』三林京子が明かす“リアル大久保さん”ぶり
それでも「落語は座布団1枚の宇宙」と楽しそうに話す。
「自分一人で、座布団の上、お扇子と手拭いだけを使って表現する。それだけでお客さんをくぎ付けにせなあかん。こんなしんどくて、怖いことない。でも、できたら、こんなすごいこともないから」
本業でもないのに、そこまで真剣に取り組むのにはわけがあった。
「私が芝居始めても、父からは何のアドバイスもナシ。ただ1つ、言われたのが『好きなことせい。ただ、まっすぐ行ったら面白うない。
できるだけ寄り道、回り道したほうがええ』と。その言葉は私の耳にずっと残っていて。どうせ寄り道するなら徹底的にせな面白うない、そう思ってるんです」
助言を守り、先述のとおり多くの芸事に真剣に向き合ってきた。
「落語の稽古、怖かったですよ。だって、たばこくわえて苦虫かみ潰したような顔した米朝師匠の前で、落語せなあかんのですよ。しびれますよ。でもね、その師匠の顔が一瞬でもフッとゆるんだら『やった!』と思います。それぐらい真剣にやらな、あかんのです」
本気で向かい合う師弟の間に、瞬間的に流れる柔らかな空気ーー。
これ、まさに大久保さんと喜美子、そのものではないか。
「そうなんですよ。