2020年9月9日 15:50
料理研究家・クリコさん“介護食のプロ”の原点は夫の闘病
そのためにもさまざまな介護食を取り寄せたりしましたが、当時は口に合う商品がなかったんです。なにより、おいしくない。病院からも的確な助言をもらえず、すでに日本は超高齢社会に突入しているはずなのにと、その大きな憤りが、その後のメニュー開発の原動力になりました」
お手本となるレシピ本も当時は皆無に近かった。
「早く夫の体重を戻さなきゃという焦りと、一日中台所に立ちっ放しの疲れとストレスで、食事をめぐって、夫に怒鳴り声を上げたこともありましたが、よくよく考えれば、いちばんつらいのは彼。料理にばかり夢中になり、いちばん大切な介護される側の気持ちを忘れていたことに気づきました」
従来のように、ただ野菜などをミキサーで混ぜて粉々にするのではなく、ひとつの食材をギリギリのサイズまで小さくして煮込む手法で作った“鮭のクリームシチュー”や、思わず章男さんが「クリコ、天才!」とうなったという独自の“シート肉”を使った料理は、夫の食欲と体力増進につながった。
「介護食は、家庭料理の延長線上にあるものなんだ!そう気づいたとき、目の前がパーッと開けました」
食道がんの発覚から半年後には体重も元に戻り、内視鏡手術も成功。