花街の女性をリアルに描写…宮尾登美子さん原作映画の新しさ
ただし、それらはあくまで男性目線だった。
「宮尾登美子さんの作品が映画化されるようになったのは’80年代に入ってから。それまでも、赤線などで虐げられる女性の姿を描いた作品はありましたが、あくまで社会問題の一つとしてでした。
しかし『櫂』や『陽暉楼』では、女性が金銭で売買され、乱暴にあつかわれ、それでも客の前では華やかに振る舞い、凛として強く生きるーー。そんな一人の人間としての女性の生き方が、リアルに、そして丁寧に描かれたのです」
こうした深いテーマを支えたのが、豪華なセットや衣装、そして俳優陣だった。
「いまならCGを駆使するようなシーンも、豪華なセットを組んでいましたし、登場する芸妓たちのきらびやかな着物も圧巻でした。緒形拳さん、十朱幸代さん、名取裕子さん、浅野温子さんなど、トップスターたちの共演も見どころでしたが、さらに清純派といわれた女優がぬれ場に挑戦することに、男性のみならず、女性も興味を抱かされました」
現在の映画やテレビでは、ここまでの性的なシーンはNGとなることが多いという。
「当時はテレビでも、『土曜ワイド劇場』(’77〜’17年・テレビ朝日系)といった2時間ドラマなどでヌードのシーンが多々ありました。