2021年10月11日 11:00
「原点は恩返し」全盲の佐藤ひらりがパラで国歌の夢を叶えるまで
不安を募らせていた母娘のもとに、合格の通知があったのは今年4月のこと。絵美さんが続けた。
「でも、いったい何のキャストに受かったのかがわからなくて。歌えるのかな、歌えるとしたら、何を歌うのかな。曲目のお知らせがないってことは国歌かなって……」
そして迎えた今年6月。2人は自宅から組織委のオンライン・ミーティングに参加。絵美さんがパソコン画面に向かって尋ねた。
「ひらりが選ばれたというのはお聞きしましたけどいったい何に?」
すると、モニターの中で開会式の音楽担当ディレクターが満面の笑みを浮かべるのが見えた。
「オーディションでひらりちゃんの歌、聴かせてもらいまして。満場一致で決まりましたよ、国歌です、国歌独唱です」
その言葉に、床に座っていた母娘は、体が浮き上がるほど喜びを爆発させたという。
「2人してね、『やったー、やったー!!』って、跳び上がりました」
しかし、コロナ禍でパラリンピック東京大会は無観客での開催に。それは、開会式も例外ではなく、貴賓席など一部を除き、観客の姿はそこになかった。それでも、中継や配信を通じ日本の隅々に、世界に、彼女の歌声は届いていた。
「歌っている間もずっと緊張していて、終わった瞬間もホッとする気持ちが強くて。