2021年10月11日 11:00
「原点は恩返し」全盲の佐藤ひらりがパラで国歌の夢を叶えるまで
「5年生のときのゴールドコンサートでグランプリを獲得して、副賞にペア航空券をいただいて。どうせなら歌える場所に行こうよってことに。でも、肝心の航空券は繁忙期は使えなくて、結局自腹で行ったんですけどね(苦笑)」
飛び込んだのが、ニューヨークのハーレムにある「アポロシアター」。かつてジェームス・ブラウンやジャクソン5ら、そうそうたるスターを輩出した人気イベント「アマチュアナイト」に挑戦したのだ。ひらりさんは耳の肥えた聴衆を魅了し、スタンディングオベーションまで受けたという。
歓声の大きさで審査されるアマチュアナイトで、ひらりさんは十数組の出演者のなか、見事、ウイークリーチャンピオンに輝いた——。
■歌の原点は恩返し。開会式後、大量の「感動をありがとう」の言葉が何よりうれしかった
ひらりさんがアポロシアターで喝采を浴びた直後。
13年9月の総会で、IOCは20年のオリンピック、そしてパラリンピックの東京開催を決定。
「ちょうどテレビでそのニュースを見てたんです。それで、またしても勝手に決めて横にいたひらりに言ったんです。『東京でオリパラだって。そこで歌うよ!』って」
述懐する母の言葉に、ひらりさんも何度もうなずいてみせた。