2021年12月5日 06:00
西成の劇団むすび「看板女優」になった92歳でゲイのおじいちゃん
見れば、全面に派手な下着姿の、首から下の女性の体が描かれている。言われるがまま着替えると、長谷さんがセクシーな下着を着用しているように、見えなくもない。
「いいやん。そんで本番中にな、『ちょっと暑いな』言うて、上着を脱ぐと、そのエロいのが出てくるっていうふうにしよか(笑)」
大笑いの劇団員たち。少々、面食らった様子の本人のもとに歩み寄っては、口々に声をかけていく。
「ずいぶんセクシーな女将やね」
「エロいというより、長谷さんがそれ着るとかわいいな、うん、かわいい!」
「ええな、長谷さん。皆から『かわいい』言われて。むすびの看板娘やなぁ」
仲間からの言葉に、照れ笑いを浮かべる長谷さん。
記者が「突然の演出変更、大丈夫ですか?」と尋ねると「ま、なんとかなるやろ」と自信をのぞかせる。
「ほかの男の人も、たまに女役を、セリフも高い声で出したりして演るけどもな。やっぱりそこは、僕が女役を演るほうが、際立つのよ」
こう言って、長谷さんは満面の笑みで胸を張るのだった。
■何に縛られることもなく、楽しそうな紙芝居。ここなら自分をさらけ出せるかもしれない
長谷さんは幼いころ、父がそばにはいなかった。