くらし情報『西成の劇団むすび「看板女優」になった92歳でゲイのおじいちゃん』

2021年12月5日 06:00

西成の劇団むすび「看板女優」になった92歳でゲイのおじいちゃん

カマボールの会場にもなった西成のカフェ「ココルーム」前にて

カマボールの会場にもなった西成のカフェ「ココルーム」前にて



多様性が認められるいまとなっては、LGBTの人たちも当然の権利を主張するようになった。だが、それをひたすら隠して生きなければならない、そういう時代も、ついこの間まであったのだ。

そうして、たったひとりで生きてきて92年、いまは大阪・西成にいる。ひとり暮らしだが、もう「孤独」ではない。3年前。家族のように、ありのままの自分を、さらけ出せる仲間と出会ったからだ――。

「ほな、これ被ってなぁ」

舞台の本番を前に、劇団員の女性がこう言いながら、日本髪のカツラを、おじいちゃんの頭に被せている。今日の彼の役どころは、明治時代の居酒屋の女将(おかみ)だ。


「おー、バッチリやん、かわいい、かわいい!」

そう言われたおじいちゃんも、まんざらでもない様子。やわらかな笑みを浮かべて「あ~ら、そう?」と小首をかしげ、台本を持つ手でしなを作ってみせている。

ここは大阪・西成。「あいりん地区」とも「釜ヶ崎」とも呼ばれ、かつては、日本の高度経済成長を支える労働者の町だった。しかし、彼らも一様に年をとり、いつしか多くの高齢者が暮らす、福祉の町になった。

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