2022年5月10日 15:50
西川美和監督が語る日本映画界の問題点「高いチケット代が作り手に1円も還元されない」
その後はプリプロダクション・撮影・ポストプロダクションまでで約半年〜1年半。さらに宣伝活動、公開後のイベント出演、海外映画祭への出席などの行事を経ると、1本につき4年から5年は経ってしまっています。
複数の作品を同時進行させていく監督もおられますが、私の場合は一本ずつの作品にしか集中できない気質なので、このようなペースになってしまいます」
西川監督は「一つの作品にかかる長期間の生活を維持するためには、監督料+脚本料+印税だけではまかないきれず、合間に外部から委託されるお仕事をお引き受けしています」といい、こう続ける。
「ですが、数十秒のコマーシャルフィルムの制作でも3ヵ月以上費やすこともあります。パートタイム労働ではないので、その間は映画の企画立案や脚本執筆が中断されてしまい、ますます作品ごとのブランクが空いてしまうという循環です」
そして「仮に映画の出資者たちが、企画立案のためにある程度長期の生活保障や必要経費を担保してくれれば、もっと制作ペースが上がるかもしれません。ただ日本の映画製作者は、企画開発や人材育成に投資したがらないですし、それに対する業界内での支援策も行き渡っていないのが実情です」