2022年6月4日 06:00
聴覚障がいの母が子育てで抱いた不安「赤ちゃんが泣いても気づけない」
美紀さん(左)と一成さん(右)と聴導犬
【前編】「歌を歌って」息子が歌手目指すきっかけ作った耳の聞こえない母からの“お願い”より続く
第94回アカデミー賞で、作品賞・助演男優賞・脚色賞の3部門を受賞した『コーダあいのうた』(以下、『コーダ』)。
タイトルのコーダとは、“Children of Deaf Adults”の頭文字で、聴覚障がいの親を持つ子どものこと。映画は両親と兄の4人家族の中でただ一人だけ耳が聞こえる主人公の少女が、通訳として家族を支えながら歌うことへの夢を追う、コーダとしての葛藤を描いた物語だ。
「映画では、家族が聞こえず少女ひとりだけ聞こえる話ですが、私の場合は、家族みんなが聞こえて、私だけが聞こえない。だから、家族とぶつかる少女の気持ちがよくわかります」
そう語るのは、重度聴覚障がい者の安藤美紀さん(52)。口の形を見て、相手が話していることを読み取ったり、言葉を話すことはできるが、生まれつき耳は全く聞こえない。
映画では、コーダとして育つ少女にスポットライトが当たっている。耳の聞こえない人の子育ては、どのようなものなのだろうか?
美紀さんは、そもそも子供を産むこと自体、周囲から猛反対されたという。