2022年7月10日 06:00
3代渡って通うお客さんも 名物立ち食いそば女性店主が見てきた人生模様
「お客さん、最近、ちょっと疲れがたまってるんじゃない。今日はそば食べたら、早引きさせてもらって家で寝てなよ」
「おばちゃんには噓をつけないね。ここんところ残業続きでさ」
彩華さんは、言う。
「これぞ、うちみたいな個人経営の立ち食いそば屋だからこその会話だと思うんです」
■「この馬場の駅前で50年も前からやってるわよ!」と言い返せないのは寂しい
病気療養でいったんは店を休んでいた彩華さんだが、7月に入り“最後のお務め”で、また吉田屋のカウンターに復帰した。
「おばちゃん、久しぶり」
暖簾をくぐってやって来たのは、学生時代からいつも天ぷらそばを食べていた常連客だった。
「あら、久しぶり。ずいぶん顔を見ないから、転勤でもしたのかねえ、なんて話してたのよ」
「そのとおり。九州に転勤だったんだよ。
でも3年ぶりに、おばちゃんのそばを食べて、やっと東京に戻ってきた気がしたよ。やっぱりそばは関東風に限るね。それにしても、おばちゃん、まだ、やってたんだね」
彩華さんは、
「“まだやってたんだ”という冗談半分の言葉にも、以前なら『うちはこの馬場の駅前で、50年も前からずっとやってるわよ!』と元気に言い返せたのに、もう、そのセリフは言えないんですよね。それを思うと、やっぱり寂しいわね」
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