2022年7月10日 06:00
3代渡って通うお客さんも 名物立ち食いそば女性店主が見てきた人生模様
あるとき、暖簾をくぐるなり、高齢の女性が、カウンター越しに問いかけてきた。彩華さんは、しばらく話し相手になって、それから近くのBIG BOX改札口横の交番へ同行した。
「きっと、認知症だったんですね。立ち食いのうちの店は、いつも引き戸が開いてるから、入りやすかったのかな。
早朝の酔っぱらいのケンカも、何度止めたかしら。タトゥーを自慢する10代の男のコに、『親からもらった健康な体に感謝して』と諭したこともありました。
10年くらい前に、やっぱり暖簾越しに、タレントの赤井英和さんが駅前に立っているのが見えたんです。私が“どうぞどうぞ”って手招きしたら(笑)、本当に横断歩道を渡ってきてくれて。
聞けば大の立ち食いそばファンだそうで、その後も何度かみえました」
学生時代からサラリーマンになっても通い続け、さらに結婚して子供ができて、その子がまた早稲田大に入って来店するという、長い付き合いの常連客も多い。
「なかには、父の寿司屋のころから3代にわたって通ってくれている人もいます。毎日、同じ時間に、同じそばを食べ続ける人も多くて。そんな常連さんは、顔色を見ただけで体調までわかるんです」
ときには、こんな会話も。