2022年10月23日 06:00
91歳、現役介護看護師 74年間さすり続けた掌のぬくもり
当の細井さんは、いつもと変わらず、マスク姿で利用者との会話を続けていた。
「挨拶一つから、その方の状態がわかる。昨日まであった返事がなかったり、逆に妙にテンションが高いと、熱があったり。
誰もがいちばん反応するのは、やっぱり、お母さんの話やね。100歳近い女性が『お母ちゃんが家で心配しとるから、はよ帰らんと』と言う。80代の男性は『さっき、おふくろにゴツンとやられた』とニコニコ頭をさすってる。ああ、きっとやんちゃ坊主だったんやろうなと想像しながら聞くんです。
無理に話を合わせようともしません。
つじつまが合わん話には、一緒にケタケタ笑ってます。
そうやって話してるうちに、その人にどんな家族がいて、どんな人生を送ってきたかがわかり、その後の会話の糸口にもなります」
そう語りながらも、利用者の湯飲みをチェックしながら、こまめにポットとテーブルの間を往復する細井さんだった。
ずっと気になっていたことを、尋ねてみた。自分より年下の利用者を介護することを、どう感じているのだろうか。
「私は、お相手が年下とか年上とか、認知症であるかなどは、あまり考えません。それ以前に、まず一人の人間として向き合おうと思ってるだけなんです」