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腸内環境のバランスを崩す薬12 下剤、胃腸薬、抗菌薬の多剤・長期服用に注意を

女性自身
腸内環境のバランスを崩す薬12 下剤、胃腸薬、抗菌薬の多剤・長期服用に注意を

薬のリスクを知ろう



腸内環境を整えようとヨーグルトや納豆をせっせと食べていても、ふだん飲んでいる薬の影響で、腸内細菌のバランスが崩れているかもしれない。

「人の腸内細菌のバランスは、3歳ぐらいで決定されますが、食事やたばこ、アルコール、病気などさまざまな環境因子により腸内細菌の多様性は失われ、バランスが崩れてしまうのです。腸内環境に影響を与える要因を詳しく調べたところ、服用している薬が、食や生活習慣などよりも3倍以上も影響が強いことがわかりました」

そう語るのは東京医科大学消化器内視鏡学の永田尚義准教授。

腸内には100兆個の細菌が生息。数千種類ともいわれる多彩な性質の細菌が寄り集まって腸内細菌叢という生態系を作っている。

また、腸内にどんな細菌が、どのようなバランスでいるかは人それぞれ異なっている。

■いろいろな菌が生きている腸が理想

永田先生は、4198人(平均年齢66歳)の腸内環境と病気や食、生活習慣などに加えて服用薬との関係を調べた大規模データベースを構築し、腸内細菌のバランスが病気に影響していると指摘した。

いろんな菌がバランスよく生きている腸内環境が理想だが、それが崩れると、がん、生活習慣病、精神疾患など病気のリスクが高まると考えられている。


「腸内細菌の大事な機能は『作る』です。腸まで運ばれた炭水化物やタンパク質を食べ、ビタミンを合成したり、エネルギー代謝をコントロールする短鎖脂肪酸を作ったりします。幸せホルモンといわれる神経伝達物質のセロトニンや心を落ち着かせる働きがあるGABAも、腸内細菌が作っていることもわかっています。また腸内細菌には『守る』という大切な機能も。外から入ってきた病原体に備えるため腸には免疫細胞や抗体が集まっていますが、特定の腸内細菌が作る短鎖脂肪酸や、細菌そのものが免疫の働きを維持しています。腸内細菌がいないと人は生きていけないのです」(永田先生・以下同)

759種類の薬剤を調べた今回の研究では、日本人の腸内環境のバランスを大きく崩す薬と、まったく影響を与えない薬があることも判明。種類別に見ると消化器疾患治療薬、糖尿病治療薬、抗菌薬の順で影響が強かったという。
どんな仕組みで、薬が腸内環境に悪影響を及ぼすのだろうか?

「過剰に出ている胃酸を抑える薬(PPI=プロトンポンプ阻害剤など)は、胃痛や胸やけなどの症状を改善する効果がある薬ですが、強い胃酸の力によってブロックされている口腔内細菌が、その分泌を抑えたことで腸まで流れ込んでしまうのです。
本来、腸には存在しない口腔内細菌が増殖し腸内環境のバランスが崩れます」

また、腸内で水分を吸収して便を軟らかくして排便を促す「浸透圧性下剤」にも腸内細菌への影響が懸念されている。比較的、副作用が少ない便秘薬だが、水分と一緒に腸内細菌を洗い流したり、ミネラルバランスを悪化させたりすることが影響を与えると考えられているのだ。

「そのほかに、糖尿病治療薬にも注意が必要です。なかでも、小腸の粘膜から糖の吸収を阻害するαグルコシダーゼ阻害剤は、食後血糖値を抑制する有効な薬ですが、糖はそのまま大腸に行ってしまいます。おもに大腸に生息している特定の細菌にとって、糖は大好物。糖を代謝分解する菌が増大し、全体のバランスを乱してしまいます」

細菌を死滅させたり、その増殖を抑えたりする抗菌薬は、病原性細菌だけでなく無関係の人にとって必要な腸内細菌を死滅させてしまう可能性が高い。

「とはいえ、抗菌薬は糖尿病治療薬や消化器疾患の薬よりも影響が弱かったのですが、それは使用期間が3日から1週間程度と短いことが要因かもしれません」

■多くの種類の薬を服用している人は注意

薬が人の健康に果たしている役割は大きい。しかし、どんな薬にも副作用はある。
これからは腸内環境のバランスを崩す副作用も考えることが不可欠だ。

「特に、多剤服用は腸内環境のバランスにとって要注意です。今回の研究では、対象者のうち、10種類以上の薬剤を服用していた人が14%も。また、腸内細菌は一時的にバランスを崩しても元の状態に戻ろうとする力がありますが、長期の服用には特に気をつけたほうがいいでしょう。多剤服用や長期服用で、免疫の働きをサポートする菌が減少するだけでなく、感染症を引き起こす病原菌や、抗菌薬が効きにくい薬剤耐性菌が増加するなどが明らかになりました。病気を治すために飲んでいる薬が腸内環境のバランスを崩し、別の病気を招く可能性も。今、飲んでいる薬が本当に必要か見直すことも重要です」

腸内環境のバランスを崩すリスクがある主な薬は次のとおり。■胃腸薬(胃酸分泌抑制薬)

【プロトンポンプ阻害薬(PPI)】

成分:オメプラゾール/ラベプラゾールナトリウム/ランソプラゾール/エソメプラゾールマグネシウム水和物

リスク:胃酸の分泌に関わるプロトンポンプと呼ばれる酵素の働きを妨害し、強力に胃酸の分泌を抑制。
胃酸で死滅する口腔内細菌が腸まで届いてしまう。

【カリウムイオン競合型アシッドブロッカー】

成分:ボノプラザンフマル酸塩

リスク:PPIよりも強力かつ持続的に胃酸の分泌を抑制する。

■糖尿病治療薬

【αグルコシダーゼ阻害剤】

成分:ボグリボース/アカルボース/ミグリトール

リスク:小腸での糖の消化・吸収を抑制したり、ブドウ糖を作る酵素の働きを抑制する。大腸にすむ糖を好む腸内細菌が増えていくことで腸内環境のバランスを崩す。

■抗菌薬

【全般】
リスク:病原菌だけでなく、害のない細菌まで死滅させる。腸内細菌が減り、バランスが悪化する。

■便秘薬

【浸透圧性下剤】

成分:酸化マグネシウム/硫酸マグネシウム水和物/マクロゴール4000

リスク:腸内で水分を吸収し便を軟らかくし、腸のぜん動運動を促進するが、腸の粘膜にすむ腸内細菌も一緒に吸収される可能性がある。

食事や喫煙、お酒などの生活習慣で“菌ケア”をしていても、薬の及ぼす影響も考えないと、本末転倒だ。
腸のために、日々のケアに加え、薬を飲みすぎてはいないかにも注意しよう。

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