2023年2月13日 11:00
28歳で早逝した天才エゴン・シーレの30年ぶり美術展を解説
(小林明子さん・以下同)
【筆致】
「シーレの絵画のなかには、20世紀前後のヨーロッパで生まれた、内面や感情など目に見えない主観的な世界を荒々しい筆致や絵の具を盛り上げる技法を用いて表現する『表現主義』の特徴を示す作品もあります。《ほおずきの実のある自画像》にも内面の激しさが筆致に表れています」
【色使い】
「色彩感覚も独特です。たとえば肌の部分には、赤や青など自然を超えたさまざまな色が使われています。《ほおずきの実のある自画像》は全体がモノクロームでまとめられていますが、ほおずきの色がアクセントになっています」
■シーレの絵をさらに知る3つのキーワード
【身近な死】
「シーレは父や姉を早くに亡くし、幼いころに身近な死を経験しました。そうした生い立ちから、死への恐怖、孤独や葛藤といったテーマに向き合い、人間の本質を絵画を通して表現しました。誰もが共感できる普遍的なテーマを描いているところもシーレ作品の魅力だと思います」
【哀愁の風景画】
「シーレといえば人物画のイメージがありますが、風景画も数多く制作しました。自然の風景や古都の街並みなど、実際の風景をもとに描きましたが、そこには自身の感情や心象が投影されていて、哀愁や寂しい雰囲気が伝わってきます」