2023年5月28日 06:00
暗闇に負けない!希望の調べ 全盲のバイオリニスト・穴澤雄介さん
音楽を仕事にするためでした」
’95年、専攻科を修了するとフリーランスで音楽活動をスタート。
「バイオリンを受け入れるバンドやアンサンブルを、探しては応募しました。でもグループに入っても、最初の楽譜の読み込みから、ほかのメンバーに著しく遅れてしまうんです」
楽譜を受け取り、視覚障害者のためのボランティアに依頼すると、1週間ほどで点訳が上がる。そこからやっと練習を始められるが、
「バイオリンは、楽譜を見ながら両手で弾きます。でも、私はまず点字を指で触れて理解し、その後にバイオリンと弓を持って……。
いちいち持ち替えながらでしか練習ができないから『人の3倍は時間がかかる』と言われるんです」
ほかのメンバーから、お荷物扱いされることもあった。
「あるとき『スケジュールが合わないから』と解散したアンサンブルが、私以外のバイオリニストで、ちゃっかり再開していました」
当時の仕事頻度は、バイオリンの家庭教師が週1〜2回、ライブは多くて月2回ほど。
「ノルマのチケット代を回収しても、手取りわずか数千円でした」
理想とかけ離れた現実を味わい、悶々とした青春時代だった。
■生きたくても生きられない子が、世の中にはたくさんいる。