2023年5月28日 06:00
暗闇に負けない!希望の調べ 全盲のバイオリニスト・穴澤雄介さん
粘り強く、しぶとく生きていこうと誓った
事件は21歳のときに起きた。父の会社の倒産と、夜逃げーー。
「その日、家庭教師バイトを終え、帰宅したのが21時ごろでした」
呼び鈴に応答すると、知らない男性2人がいきなり入ってきた。
その後も立て続けに何人も上がり込み、20人ほどに取り囲まれた。
「そこで『父の会社が倒産した』と聞かされました。彼らは債権者だったんです。『父親の居場所を教えろ』『金を出せ、あるんだろ!?』怒鳴られ、脅され……本当にドラマのワンシーンのようでした」
商売道具のバイオリンだけ死守してほうほうの体で家を飛び出し、知人や友人宅を転々とした。
2カ月後なんとか4畳半アパートに落ち着いたが、家からは家財道具一式、持ち去られていて……。
「残ったのは炊飯器だけ。お米を炊いてもおかずを買う余裕がなかった。体重が40kg台に落ち、ガリガリに痩せ細ってしまいました」
視覚障害者の手当はあったが、それだけでは生活できない。市川市役所で追加支援の有無を聞くと、信じがたい差別発言を放たれた。
「50代の男性職員が、笑いながら『あなたみたいな人にできる援助はないということですわ』と言いました。