2023年5月28日 06:00
母は家出、父は夜逃げ 全盲のバイオリニスト・穴澤雄介さんの壮絶半生
’95年、専攻科を修了するとフリーランスで音楽活動をスタート。
■夜逃げした父は29歳のとき消息が判明。5年前、危篤状態で意識のない父に手向けの曲を奏でて
事件は21歳のときに起きた。父の会社の倒産と、夜逃げーー。
いきなり自宅にやってきた債権者に取り囲まれ、商売道具のバイオリンだけ死守してほうほうの体で家を飛び出し、知人や友人宅を転々とした。
2カ月後なんとか4畳半アパートに落ち着いたが、家からは家財道具一式、持ち去られていて……。
「残ったのは炊飯器だけ。お米を炊いてもおかずを買う余裕がなかった。
体重が40kg台に落ち、ガリガリに痩せ細ってしまいました」
視覚障害者の手当はあったが、それだけでは生活できない。市川市役所で追加支援の有無を聞くと、信じがたい差別発言を放たれた。「50代の男性職員が、笑いながら『あなたみたいな人にできる援助はないということですわ』と言いました。強烈な悔しさで涙が出て」
その怒りが、一切の甘えと退路を断った。以来「どんなに小さい仕事でもくまなく探して取りに行く」営業スタイルで動きだした。
そしてついに、CDデビューのチャンスが。’99年、24歳でアルバム『シンシアリー・ユアーズ』を発表したのだ。