ダウン症の俳優・吉田葵(17) 「『この子は将来、ドラマに出るんだよ』と話しても、絶対に信じないでしょうね」障がいのある子を持った母の葛藤
背筋もピッとなったから、自宅でそうとう練習したのでしょう」
障がいがある人を受け入れたことがなかった平多さんだが、葵の努力する姿勢に舌を巻くこともあったという。
「葵君の頑張りが目に見えるから、こちらも指導に力が入ります。練習で失敗すると、葵君はすごく悔しがります。『もう一度やる?』と聞くと、ほかの子は『疲れました』と言うことが多いのですが、葵君だけは『やります!』と。彼の努力と根性に刺激されて、ほかの生徒たちが目の色を変えるくらい」
ダウン症の人は自分と他人を比べないといわれるが、葵はよく悔しがる。自身がダウン症であることを母に告げられたのも、「悔しがった」ことがきっかけだった。
■「悔しい、悔しい」と言う葵に「ダウン症だから筋力が弱いんだよ」と
「葵に、ダウン症であることを告げたのは、彼が小学5年生のとき。当時、徒競走で1位をとりたかったのですが、どうしても勝てずに『悔しい、悔しい』と。
そのときに『ダウン症だから筋力が通常より弱いんだよ』と丁寧に説明しました。健常者とダウン症の人の体の違いを伝えると、葵も『筋肉が違うから、オレは速く走れないんだ』と。それでも、1位をとれないのは悔しいと言うから、葵はバレエも踊れるじゃない、指揮だってできるじゃない、駆けっこで1位になれなくても、ほかにも得意なことがあるんだからいいんじゃないの、と言いました」