「覚醒剤で6回服役」の反社会的勢力の元幹部にも寄り添う 北新地放火殺人事件遺族・伸子さん
(撮影:塩川真悟)
病気のときも、いろいろ調べては最悪の場合を想定して落ち込んでいた。
ところが、事件が起きてからの妻は驚くほどポジティブ。本来楽天家だと思っていた私のほうが事件を引きずっていて、ときどき気持ちが沈んでしまうこともあるんです」
それが一般的な被害者遺族の心境というものだろう。
「でも、家族のなかで彼女だけが“被害者遺族”ではなく、前向きにどんどん前に進んでいく。そんなふうに見えています」
ご主人の言葉を伸子さんに伝えると、苦笑しながらこう言った。
「たしかにかつての私は不安性で、息子の受験に執着したり、友人とのささいな行き違いにイライラしたりとストレスをためがちでした。
病気をしたとき、そういう私の不安や怒りが体に出たんだと、すごく感じたんですね。
やっぱり執着したらダメなんです。
執着を外して『もういいわ』『なるようにしかならんわ』って思えたとき、すべてが好転していった。そういう実感があるんです」
■覚醒剤で6回服役した反社会的勢力の元幹部も
被害者遺族という執着を捨てると気持ちが軽くなった。心が自由になり、考え方がシンプルになった。そこから加害者支援の方向にも目が向いていったようだ。