被災地の77歳女性寿司職人、苦難続いても笑顔でいる理由
と言われて泣きたくなったが、トミエさんは再び自分に言い聞かせたという。
「人生は七転び八起き!」
トミエさんのために、なじみの大工さんや家族、親戚も片付けを手伝ってくれて、藤乃寿司は震災発生から49日という驚異的な早さで営業再開を果たした。
「村にある店では(再開)第1号でしたね。村のみんなが集まるところがないと大変じゃないかな、と思って急いだんです」
座敷の畳も間に合わず、代わりにマットを敷くしかなかったが、店に明かりがともると、ぬくもりに引きつけられるように続々と客がやってきた。自宅を失った人も、家族を亡くした人も集まって、お互いの無事を確認し、震災の経験を語り合い、慰め合った。そんな客たちをカウンター越しに眺めながら、トミエさんは寿司を握った。
「皆さん、すごく不安だったと思います。皆で話す場所がほかになかったから。
早く再開できて本当によかった」
トミエさんはことあるごとに「お客さんが店を育てた」と、村の人に感謝する。客も「かあちゃんに話を聞いてもらって、ホッとした」と、感謝する。