“バリアフリー着物”開発した80歳女性語る起業のきっかけ
何よりショックだったのは、着物が着られなかったこと。帯を結ぼうとしても、背中まで手が回せなくなってしまったのです」
「錦織」などの美術帯のコレクターだった祖母の影響を受けていた鈴木さんは、子どものころから着物好き。銀行員時代は、接待などの“勝負服”はいつも着物だったという。
「呉服店に相談に行くと、帯を2つに切れば、帯を結べますと、提案されました。しかし着物を“生き物”を育てるように大事にしていた祖母のことを思うと、帯に鋏をいれるのは抵抗がありました。もう一度、着物を着たいと思いながら憂うつな日々を過ごしていましたが、ある朝、お風呂に入っていたとき、折り紙でいろんなものを作れるのだから、帯でも同じようにできないかと思いついたのです。浴室を飛び出して、さっそく帯を折っていました」
試行錯誤を繰り返したすえに誕生した「さくら造り帯」は、糸で10カ所ほどを縫い合わせて固定するだけ。糸をほどけば、帯は元どおりになる。
その後も、鈴木さんは、長襦袢や着物などでも“バリアフリー着物”を発案した。