「夫の年金を取り上げられた…」成年後見制度に潜む落とし穴
「市役所の人たちがしきりに成年後見制度の利用を勧めるので、利用してみたらとんでもないことになりました。わが家のお金なのに、人さまに頭を下げないとビタ一文、使えなくなってしまったのです。制度を利用したメリットは何もない。悪いことばかり。こんな制度と知っていれば絶対に利用しませんでした」
東京都の三多摩地区に住む山村洋子さん(70代・仮名)は怒りに声を震わせた――。
いま成年後見制度を巡るトラブルが全国で多発していることは、あまり知られていない。成年後見制度は、介護保険と同じく’00年から始まった。認知症の高齢者や知的障がい者など、判断能力が十分でない人の財産を守るために設けられた制度である。
本人や家族からの申し立てを受けて、家庭裁判所が選任した後見人が、認知症の人などを保護・支援するものだ。発足した当初、後見人の約9割は、子どもなどの親族がなっていた。
ところが制度発足から17年を経た現在、弁護士や司法書士など、親族以外が後見人になるケースが全体の7割以上に上っている。じつはこうした親族以外が後見人に選任されることで、逆に多くの認知症の高齢者と、その家族が苦しんでいる現実が生じているのだ。