【韓ドラの凄ワザ!】究極のガイド「イ・ヨンエの晩餐」
100坪以上の豪邸の披露も初めてなら、夫と双子の子どもの素顔の公開も今回初で、普通では考えられないこのプライバシー公開の意図はよくわからない。現在の韓国料理の在り方の一環として自身の家庭での食事風景を紹介しただけかもしれないが、それにしても通常のドキュメンタリーではあり得ないほどの過剰サービスと考えたのは筆者だけだろうか。
第二部は、イタリア・フィレンツェへの海外取材で、グッチと共同主催した韓国伝統料理晩餐会の一部始終が収録されているが、韓国料理レストランが一軒もないイタリアの1000年都市フィレンツェで、2000年続いた韓国料理の神髄(薬食同源)を再発見するのは、料理研究書としても非凡な視点だ。異国で自国のアイデンティティを確認するテーマとして「料理」を取り上げているのは、この本を貫く基調低音ともいえる。さらに「料理」を「絵画」に替えれば、実は13年ぶりの復帰作『師任堂、色の日記』のストーリー展開とも相通じるところがあるのではないか。
テレビ番組やドキュメンタリーを書籍化する際には、事前に視聴していることを前提で編集されるものが多いが、今回の『イ・ヨンエの晩餐』はその番組を見ていなくても、一冊の本として、韓国料理のルーツを探るという観点でも読むことが可能な内容となっている(著者クレジットは、イ・ヨンエと番組の放送作家との共著)。『師任堂、色の日記』観賞の際の一番のガイドブックは実はこの本かもしれない(連載・了)。
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