夫の死で決意…「世界の山ちゃん」女社長の“凄腕経営”奮闘
(久美さん・以下同)
経営のことなど、何もわからない。だが、9月6日には、取引企業のトップを招き、全店の店長や社員も出席して、経営計画発表会が開かれる。その日までに、会社を継ぐかどうかを決めなければならない。決断の時は刻々と迫っていた。
そんななか、久美さんは「てばさ記新聞」9月1日号の準備を始めた。毎月1日、各店舗に張り出すかわら版だ。結婚直後に重雄さんから頼まれて始めた新聞は、唯一、専業主婦だった久美さんが「世界の山ちゃん」に関わってきたものだった。
休刊にしようという声もあがったが、久美さんは、夫の遺してくれた自分の仕事をどうしても全うしたかった。
トップの見出しは、《山ちゃん天国へ!ありがとう山ちゃん》。重雄さんがモデルの鳥男が、大きな翼を広げ、飛び立たんとしているイラストが躍る。その吹き出しにはこうあった。
《世界は広いなぁ。次はどこに店を出そうかなぁー!空からさがしてみよーっと!!》
夫の死から、1週間とたたない時期に、手書きで書いた「てばさ記新聞」は、1回きりのカラー版。突き抜けて明るいものになっている。