水上恒司の“正解のない世の中”を泳ぎきる軸「貫くことと、押し通すことは違う」
ヒーローではなく、ヒールですね、彼は」
人は、生きていくのに必死だ。どれだけ耳触りの良い言葉を使っていても、最後には自分だけがかわいい。人間の綺麗な部分も汚い一面も見逃さず、ただそこに在るものとして捉え、岸谷の人格を再形成する。水上は、本作を通して俳優の醍醐味を認識し直したように見えた。
池松壮亮の存在の濃さ
映像作品に触れる鑑賞者にとっての醍醐味は、俳優同士にしかわからないシンパシーのもとに繰り広げられる、その場限りの掛け合いを目の当たりにすることにある。岸谷の役柄上、主人公の朔也とやりとりするシーンが多く見受けられたが、俳優・池松壮亮から感じ取ったものは。
「池松さんは、存在の質が濃い。彼のどういった部分からそれが滲み出ているのか、ずっと気になりながら現場で観察していました。僕にとって本作が池松さんとの初共演。だからこそ、僕にとって池松さんはずっと朔也だったんです。また再共演する機会に恵まれたら、接し方やアプローチが変わってくると思います」
ワンカットで撮りきったという、朔也と岸谷が揉み合う終盤にかけてのシーン。石井裕也監督からのオーダーは「押したり引いたり、ぐちゃぐちゃになってほしい」