水上恒司の“正解のない世の中”を泳ぎきる軸「貫くことと、押し通すことは違う」
「お仕事をお受けするか・しないかの判断は、作品を世の中に放っていく責任について思案するのと同義だと考えています。ときには自分自身で、作品が内包するテーマやメッセージを掘り出す必要がある場合もある。だけど、この『本心』に関してはありません。それは僕ではなく、たとえば石井監督のなかにあるもの。僕はただ、この役をやりたくてやった、それだけにすぎず、この作品を観た方がどのように解釈するかは、受け手に委ねられることだと思っています」
最先端技術が発達した世の中で、人はどのような生き方を選ぶのか。『本心』のように、わかりやすい正解や答えを与えないエンターテイメントが増えている。「やはり良い作品は、受け手に対して解釈する余白を与えてくれる。もちろん『本心』もそのうちのひとつです」と言い切る水上の自信には、根拠がある。
「ときとして映画産業は教育になり得ます。子どもだろうと大人だろうと関係ない、映画にはさまざまな方向に与える影響力がある。そのなかで、解釈や判断を委ねられることに対して、ある種の不安を感じる方がいらっしゃるのは当たり前です。僕はどちらかというと、わかりやすく答えを提示されるほど『本当に?』と疑ってしまうタイプ。