2021年12月31日 07:00
舞台女優としての存在感をみせた大竹しのぶ、吉右衛門最後の石川五右衛門など 演劇ジャーナリスト・大島幸久が振り返る、2021年お芝居myベスト
劇中劇の忠太郎と母おはま、相撲の「瞼の土俵入り」や恩師ジュール先生などの人物を演じ分けた描写が初演よりくっきりとした。自分を捨てた母親への怒りも濃く、その分、歩んできた道の苦しさ、厳しさが浮かび出た。舞台俳優としての先の楽しみが増した、と思う。(8月17日所見)
歌舞伎座『三月大歌舞伎』チラシ
⑤最後が歌舞伎。『三月大歌舞伎』の歌舞伎座第3弾。『桜門五三桐』で中村吉右衛門は石川五右衛門を演じた。吉右衛門最後の舞台となったその姿を5日と16日に観た。体調不良で途中休演した1月以来の出演であり、五右衛門はこれ限りかと目に焼き付けたかった。
京都東山の南禅寺楼門。咲き誇る桜の春景色、大百日(だいびゃくにち)のかつら、どてら姿の吉右衛門が「絶景かな、絶景かな」。奇才の立役は名台詞名調子を響かせた。11月28日に他界。客席から観る大歌舞伎こそ、「絶景かな」であった。
プロフィール
大島幸久(おおしま・ゆきひさ)
東京都生まれ。団塊の世代。演劇ジャーナリスト。
スポーツ報知で演劇を長く取材。現代演劇、新劇、宝塚歌劇、ミュージカル、歌舞伎、日本舞踊。何でも見ます。著書には『名優の食卓』(演劇出版社)など。鶴屋南北戯曲賞、芸術祭などの選考委員を歴任。「毎日が劇場通い」という。
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