くらし情報『『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』開催中 箱根・ポーラ美術館の建築や立地をいかしたサイトスペシフィックな展覧会』

『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』開催中 箱根・ポーラ美術館の建築や立地をいかしたサイトスペシフィックな展覧会

「太陽光がどう入るか、建物の構造やデザインはどうなっているかなど、ポーラ美術館を訪れた客人のひとりとしてどう介入していけるかを考えながらつくりました」。彼は展覧会を「カメラのない映画」と喩え、観客もいつの間にか演者のようにさまよい歩いている。

「私にとって、作品とは楽譜の音符のようなもので、それぞれの作品がどう一緒になって新しい曲を奏でるかが大事。さらに今の私の気持ちが加わったり、新しいテクノロジーに挑戦したりしながら、作品がまた新たなイメージを持っていくのです」。つまり、過去の作品であっても毎回その場所に応じて新しい見せ方となり、設営中に作品が変わることもあるため、今回も「すべてが新作ともいえる」という。

例えば魚のバルーンはパレーノのおなじみのモチーフだが、同展では、窓越しに森が見える展示室が水槽のようになり、魚たちが重力やスケール、時間の流れといった地上の法則から解放されて泳いでいるように見える。天候や光、空気の流れ、鑑賞者の動きがバルーンに作用し、偶然性を含む変化をもたらすのだ。

また、ポーラ美術館の新収蔵作品でもある2012年の映像作品《マリリン》を、自動演奏ピアノ、溶けて半分汚れたような人工雪《雪だまり》、太陽光を捉える巨大ミラー作品《ヘリオトロープ》とともにひとつの舞台空間のごとくしつらえたのも初めてのことだ。

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