『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』開催中 箱根・ポーラ美術館の建築や立地をいかしたサイトスペシフィックな展覧会
展覧会全体を通じて、光、雪、バルーン、生きものなど、変化する儚いものがよく登場する。そのためか、通奏低音のように寂しさや憂いのような感情が流れていると感じた。それはこうしている今も、遠いどこかで戦争が止まない現代、あるいは自分自身の心を鏡のように映しているのかもしれない。あなたは何を感じるだろうか。
併せて、過去にポーラ美術振興財団の助成を受けた作家を紹介するシリーズ「HIRAKU Project」vol.16の『鈴木のぞみ The Mirror, the Window, and the Telescope』も必見だ。古い家屋の窓や長年使われていた鏡などを用いて、人々がかつてその窓越しに見ていた風景や、鏡に映して見つめていたもの、あるいはそれらが使われていた時代の大衆の記憶を彷彿とさせるイメージを焼き付け、“事物に潜む記憶”を浮かび上がらせる。鑑賞者を彼方へと誘う作風は、パレーノの世界とも響き合うものがある。会期が長いので、季節の移ろいとともに箱根のアートの旅を楽しんではいかがだろうか。
鈴木のぞみによるアーティストトークPhoto: Ken Kato
展示風景:HIRAKU Project Vol. 16鈴木のぞみ『The Mirror, the Window, and the Telescope』ポーラ美術館2024年
Photo: Ken Kato写真提供:ポーラ美術館
取材・文:白坂由里
<開催概要>
『フィリップ・パレーノ:この場所、あの空』
2024年6月8日(土)