『ディスクレーマー』アルフォンソ・キュアロン監督インタビュー「本当に信じられるものは何なのか?」
本作の最大のポイントは、そんな状況下でありながら登場人物たちが“真実”を求めて行動しないことだ。本作は緊張感のあるミステリーでありながら、刑事も探偵もいない。誰も推理しないし、真実を求めない。むしろ、すべての登場人物が真実から遠ざかろうとしている。真実に近づくのが、真実を知るのが怖いのだ。真実を認めたくないのだ。
「いまはいろんな知識を得られるツールがあるかわりに、それぞれの目線から語られる物語に毒されていると思うのです。それぞれの視点から語られる物語を信じてしまうことで、矛盾した情報があふれている。
そこから抜け出す解毒剤はあるのか?結局のところ、それは“愛”だと思います。愛というものは言葉にできないですし、そもそも説明ができない。感じるしかないものです。
私たちは自分自身で真実を作り上げてしまいます。ひとつの事実があったとして、自分が何を信じたいのか、何を真実と思いたいのかによって解釈を、語り口を変えてしまいます。そんな中で本当に信じられるものは何なのか?私たちは何を頼りにすればいいのか?結局のところ、それは“愛”かもしれない。これが本作のメッセージかもしれません」
あの夏の日、キャサリンに何が起こったのか?複数の視点から複数の言語で複数の物語が語られる。