『ディスクレーマー』アルフォンソ・キュアロン監督インタビュー「本当に信じられるものは何なのか?」
エピソードIの冒頭、キャサリンは王立テレビ協会のテレビ・ジャーナリズム功労賞の授賞式に出席するが、そこでプレゼンターがスピーチに紛れて観客に“ある警告”を発する。
“語りと形式にご注意を。その力は私たちを真実に近づける反面、人をコントロールする強力な武器にもなり得るのです”
「私たちは観客をトリックで欺こうとしたわけではありません。ただ、観客が自分の想像力を使って勝手に判断してしまうことはあるかもしれません。先ほど、この映画には一人称、二人称…と異なる映画言語があると話しましたが、そこには“観客の視点”も入ってくるでしょう。本作の冒頭のスピーチでも語られていますが、人間は知らず知らずのうちに自分自身を騙してしまうことがあるのです。この物語では誰も嘘をついていないんです。キャサリンは何度も説明しようとするけど、彼女が説明することを周囲の人も観客も否定して、ちゃんと聞いてあげません」
「映像は非常に危険な諸刃の剣」
ここで少しだけ脱線する。
ある映画に女性が男性を追いかけて行って平手打ちする場面が出てきたとする。それはもちろんフィクションで、台本があり、俳優が演技し、カメラの後ろではたくさんのスタッフが見守っていたはずだ。