2023年11月16日 12:00
【レポート】笑いと謎とノスタルジーが絡み合う、爽快なミステリーコメディ『月とシネマ2023』
撮影:加藤幸広
中井貴一主演、G2作・演出の舞台『月とシネマ2023』が上演中だ。本来なら2021年春、再始動したPARCO劇場のオープニング・シリーズの掉尾を飾るはずだった公演である。当時の取材で、中井が「コロナ禍で人の心が殺伐とすることが怖い。そうさせない、心を動かす何かを作りたい」と語った言葉に深く同意したことを思い出す。しかし舞台は新型コロナウイルスの影響により、開幕直前に無念の全公演中止となった。2年を経て、作品は大幅に改訂されて登場人物が増え、パワーアップして再生。舞台上には中井が目指した、人々の心を温め、繋がりを信じさせてくれる、そんな可笑しく、切なく、優しい世界が広がっていた。
『月とシネマ2023』より、左から)藤原丈一郎(なにわ男子)、中井貴一撮影:加藤幸広
敏腕映画プロデューサーの並木憲次(中井)は、30年以上も絶縁状態にあった父親の訃報を受けて、父が遺した故郷の映画館を訪れる。映画館を継ぐ意思などない並木は早々に地元の不動産屋・佐々木(金子岳憲)に売却の見積もりを頼むが、ここで長く働く映写技師・黒川(たかお鷹)も、並木の仕事仲間の映画会社宣伝マンでこの映画館の特別会員だという小暮(藤原丈一郎)