2021年3月2日 14:00
小林私、予定調和無しの〈独演会〉で放った自由さと説得力 初バンドセットで挑んだ"8曲"ワンマンレポート
「1部は15分押したんで、今度は1時間巻こうかな。みなさんは楽しみに来てるかもしれないですけど、僕らは仕事ですから」と再びフロアをざわつかせる。と思えばその流れで好きな落語の話から「暑いな」とか言ってさりげなく自身が着ているグッズのスウェットを宣伝する……「ワンマンなので何言ってもウケると思ってます」という言葉が本音なのか何なのかはわからないが、とにかく、この時点で曲を演奏している時間と喋っている時間がだいたい同じくらいになっているのは確かだ。
ところで「8曲」というのは要するに1月にリリースしたアルバム『健康を患う』を収録順に全曲(つまりリリースされている全レパートリー)やるということなのだが、じゃあそれがよくある「アルバムの再現ライブ」的なものなのかというとまったくそういうわけでもない。というよりも、8曲の塊である『健康に患う』を、あっちこっち寄り道する(そして急に曲がり角を曲がるようにして無理やり曲につなげる)トークによってぶっ壊してとっちらかす、そこに主目的があるんじゃないかというくらいに、彼は音楽について何も語らないのだ。
「今日は僕、焦りゼロですから」
曲に込めた思いがどうとか、どういうふうに受け取ってほしいのかとか、「盛り上がっていこうぜ」