くらし情報『興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕』

興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕

興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕


政治に関心を持つレベッカがこの時代には奇異な女性であることは、訪問者たちの彼女に対する侮蔑的な発言から見てとれる。全身から孤高の美を放つ三浦の立ち居振る舞い、透徹した瞳の強さ、意志のこもる声に終始、惹きつけられた。冷静なようで不意に過言を吐いたり、いきなり取り乱すなど、レベッカも制御の効かない人間の業を突きつけて来るキャラクターだ。息苦しさと悲壮感に満ちた対話の果ての、ロスメルとレベッカの選択。その衝撃の幕切れを思い起こせば、胸騒ぎと充実の痺れが蘇る。


興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕


ロスメルが大事なことを口にしようとする、そうした重要な局面に差し掛かるタイミングで度々ヘルセットが現れて、流れを断ち切る展開が面白い。梅沢の醸す不気味でシニカルな存在感が、サスペンスの味わいを生み出していた。大きな窓から差し込まれる光の変化、水を含んだ風を感じるカーテンの揺れなど、いたるところに彼らの心情のヒントが隠されているようで、明解な答えなどありようがない。そのもどかしさがたまらなく、劇の一瞬一瞬をもう一度巻き戻して、確かめたくなるのである。イプセンの不条理を探る旅、緻密な演出と真摯な表現による劇世界がもたらすのは、興奮と切ない痛みが入り混じる演劇体験だ。

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