興奮と切なさが入り混じる、イプセンの不条理の旅 舞台『ロスメルスホルム』開幕
取材・文=上野紀子
撮影=田中亜紀
<初日終演後 コメント>
■栗山民也(演出)
穏やかで、なんとも心地よい豊橋の芸術劇場で初日を迎えました。客席のやわらかだった空気も、物語が進むにつれ何か熱い一つの塊になっていくようでした。いろんなものがギュッと詰まった19世紀末の物語です。いろんな人がいて、いろんな風景が広がり、いろんな感情が物語を右左へと強く揺さぶるように動かしていきます。
劇中にある「世界中が見つめている。耳を澄ましている」など自由社会への渇望を求めるセリフが、登場人物たちの熱い行動とともに、今のこの不穏で愚劣な世界に強く響くのです。この一つの劇で、何が可能か。みんなの心に深く刻まれますように。
■森田剛
稽古が始まってからあっという間であり、やっと初日というような感じでもあります。
お客様に届いているという実感があり、他の出演者の方たちの熱もあがっていくのを感じ、自分としても心が動く瞬間がみつけられたので、毎回その瞬間を汲み取っていきたいです。これから福岡、兵庫と重ねて東京で演じる時はまたどんどん変わっていくと思います。見れば見るほど発見がある作品なので、できれば何回も見てほしい。