2023年8月2日 07:00
松下洸平×栗山民也 忘れてはいけない、今も起こり得る記憶『闇に咲く花』
晩年はサッカーを観るのも好きで、「スイマセン。2時間、観ちゃいました」なんて手紙を書いて来るわけ(笑)。
松下ハハハ!
栗山井上さんとスポーツって、ちょっと結びつかないと思わない?劇構造をこんなにも緻密に構築して、あたかも今起きたかのように作るのが演劇だとすると、スポーツは“その瞬間”なんだよね。その瞬間、逆転の一発が入ったらワーッとすべてが変わる。井上さんは、そういう物語展開に憧れていたんじゃないかなって気はしますね。
――井上さんが本作に取り掛かる前に、栗山さんと能の話をされたとか。本作について栗山さんは「世阿弥の複式夢幻能*の構造を土台にしたもの」とおっしゃっていますね。
(*前後二段の構成で、後場では主人公が霊的な存在となって語る)
栗山井上さんの作品は、往々にして死者の物語です。悲惨に、無惨に死んでいった人間たちが、なぜそんな運命を辿らなければならなかったのか。そこが井上さんの出発点であって、ならばその人たちにもう一度、言葉と肉体を与えて今に蘇らせてあげよう、それが演劇であると。健太郎はまさしくそういう存在だよね。
松下あ〜、そういうことなんですね。
栗山だって、「もう死んだ」