くらし情報『【観劇レポート】駿府城公園で上演 SPAC『天守物語』』

2023年5月4日 12:30

【観劇レポート】駿府城公園で上演 SPAC『天守物語』

そうして、我々はあらゆる生物の純然たる「生」の「胎動」が世界を構成していることを眼前にする。それを肯定することが、今日的な社会や政治が抱えるテーゼだろうし、今作を通して観客は「いまを生きる現実」と「我々の、いま、為すべき事」を知るのだ。そんな観客の人生観をあっという間に変えさせる経験を与えてくれる宮城の対位法的な手法は、これまで以上に洗練されて高みに達していると言えるだろう。

「いま、ここ」にいることの愉悦を味わえる至極の観劇体験

俳優陣は皆素晴らしく、宮城とともに彼の主催していたク・ナウカ時代から共闘し続けた富姫役の美加理は、アジア的な所作や佇まい、さらには表情、指先に至るまで、張り詰めた緊張感の中で己の肉体に、国籍やジェンダーなどを超えた、生物だけが醸し出す生存の美しさや悲しみ、喜び、ユーモア、愛おしさを十全に宿らせていた。彼女の身体言語は「生」の有り様を我々にリアルに感じさせる。まさに誰も真似できないオンリーワンの芝居。「愛」に殉じる図書之助を演じる大高浩一は肉体を巧みに使った高貴な芝居を見せたし、富姫の語り手は阿部一徳だが、淀みない台詞回で公園中に響き渡らせる声質に圧倒された。

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