2021年10月1日 12:00
新納慎也「劇場で一番泣いているのは僕かもしれません」 演出家デビュー作『HOPE』開幕直前インタビュー
そんなある種の希望がテーマとなっている作品なので、興味を持ったんですよね。
――アイデンティティのような大事なものに固執し、懸命に守ろうとする物語かなと勝手にイメージしていましたが、今のお話だとまた少し違うようですね。
そう、僕も最初はそう思っていましたが、どんどん台本を読み進めて、演出を進めていくと、テーマはそれだけじゃないなと。戦争、人種差別、貧困問題、それに裁判制度への疑問……、人が人を裁くことの残酷さとか、さまざまなテーマが積み重なっているんです。あらゆる年代の方に観ていただきたいけれど、とくに日本のミュージカルファンの中心層となる、大人の女性の方に共感していただけるお話かなと思います。
――ミュージカルの主人公が“老女”と呼ばれる年齢の女性であることも特異ですよね。
そうですね。まあ本質は、女性であるとか年齢がどうとかではなく、人としてどう生きるか、だと思います。
例えばこのコロナ禍においては、高学歴や高収入であってもコロナにかかって死んでしまう人はいるわけです。「自分がやりたいことをやって生きなくちゃ。じゃあ本当に自分のやりたいこととは?」と、皆が生きることを考え直した時期だと思うんですね。