カトリーヌ・ドヌーヴ主演『ベルナデット 最強のファーストレディ』──フランス国民のハートを鷲づかみにした大統領夫人の戦略【おとなの映画ガイド】
日本の吉永小百合さんもそうだけれど、時代や文化に順応しながら常に主役を張り続ける大女優だ。
最近は、セドリック・カーン監督の『ハッピー・バースデー 家族のいる時間』や是枝裕和監督の『真実』など家族の物語に、落ち着いた母親役で出演することの多かったドヌーヴだが、本作のオファーを受け、「(最初は)え? ベルナデット・シラク……? でした。伝記映画には興味もありませんでしたし。けれど、監督のレア・ドムナックとクレマンス・ダルジャンのシナリオがとてもよく書けていて、すごく笑えた。事実をそのまま映画にするのでも、ベルナデットに似せようとするのでもなく、ただ役の心を演じればいいのだということを理解した」のだという。
夫のシラク(ミシェル・ヴュイエルモーズ)を大統領にするため、県会議員をしながら常に陰で働いてきたベルナデット。就任したあとも、内助の功を大切にして、大統領夫人としての仕事を与えられない日々が続こうが、亭主関白のシラクから「おれと結婚してよかっただろう」と上から目線で言い放たれようが、広報を担当する娘(サラ・ジロドー)から軽視されようが、じっと耐えていた。
それが、あることをきっかけに彼女はキレる。