くらし情報『戦記物に括られない骨太なドラマに 『アルキメデスの大戦』ゲネプロレポート』

2022年10月3日 18:00

戦記物に括られない骨太なドラマに 『アルキメデスの大戦』ゲネプロレポート

特に、櫂直を演じる鈴木拡樹は、権力に揉まれ葛藤することで、時に苦悶に歪み、時に怒りに満ちた多彩な表情を使い分け、腹の底から発せられる台詞には説得力があって観客の感情を昂らせた。また天才数学者ゆえに経験する悲劇の予感を醸し出した彼の色彩豊かな風情には、ほのかな色香があって、思わず目を奪われてしまった。鈴木の俳優としての魅力を垣間見た気がする。

戦記物に括られない骨太なドラマに 『アルキメデスの大戦』ゲネプロレポート

戦記物に括られない骨太なドラマに 『アルキメデスの大戦』ゲネプロレポート


また、櫂直のバディと言える、田中正二郎役の宮崎秋人は、時折見せる面白おかしい芝居が舞台のアクセントになって、観客を飽きさせなかった。

戦記物に括られない骨太なドラマに 『アルキメデスの大戦』ゲネプロレポート
カンパニー全員の胸から噴出する情熱を正面切って掴み、それを客席に届けることで、有無を言わさず観客の感情を揺さぶってくれる傑作だ。おそらく、舞台芸術における根源的なテーゼである「人間とは何か?」という問いを突き詰めようとした結果、強烈なパッションが生まれたのだろう。それは本作を支える原作、脚本、演出、芝居などあらゆる要素を有機的に絡み合わせ、生々しいグルーヴを解き放つことに成功。それゆえ舞台はエモーショナルでシリアスだが、絶妙なユーモアをスパイスに、気高さも狂気も孕んだ人間の魂の有り様をストレートに描き切った。

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