2022年10月3日 18:00
戦記物に括られない骨太なドラマに 『アルキメデスの大戦』ゲネプロレポート
言い換えれば、観客に人間の生きる意味の再構築を促す野心的な舞台でもある。コロナという困難に負けずに、この時代において上演される意義の大きさを感じさせてくれた。
また、この舞台では我々が辿ってきた歴史も描いている。その中で、脚本の古川健と演出の日澤雄介は、我々が歴史を共有した瞬間に決定済みの事実として忘れ去り風化させることへの明確な批評精神を抱いて作劇をしている。彼らが拘っているのは、観客がクロニクルとして歴史を学び知識にするだけでなく、キャラクターたちが生身で遭遇した事件をリアルに味わい、それらの経験を生きるための縁にしてもらうことではないか。我々が生きる過程で何かの折に立ち上がる日本人が辿ってきた歴史の真実を記憶し後世に繋げて欲しかったのだろう。本作には劇団チョコレートケーキの古川と日澤のタッグの肉体性を帯びた瑞々しい思想が根付いているからこそ、戦記物に括られない骨太なドラマを作り上げることに成功した稀有な作品でもあるのだ。
公演は17日(月) まで。その後、各地を巡回し、11月3日(木・祝) の広島・呉信用金庫ホールにて大千秋楽を迎える。
取材・文=竹下力
写真提供=東宝演劇部
『アルキメデスの大戦』チケット情報
https://w.pia.jp/t/archimedes/
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