森山直太朗インタビュー「映像作品『素晴らしい世界』をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしい」
――なるほど。となると、〈前篇・中篇・後篇〉ですべてを出し切って曝け出した後に、さらに何を見せるのか? ということを『素晴らしい世界』という物語の文脈の中で考えなければいけないという難しさがあったのではないかと想像しますが、そのあたりはいかがですか?
これ、面白いもので、ここでやってみたいっていう衝動の方が勝っちゃうんですよ。そうなると、なんでもできるんです。その場所でやりたいという気持ちやそこへ向かうプロセス、どうしてここでやるのかといった必然性、そこに、その場所の持つ磁場の強さが合わさって、どんどん純度を高めていくと舞台では奇跡が起こるんですよね。そしてそれは、どうしても両国国技館でなければならなかったんです。武道館でもなかったし、他のどんな場所でもなかった。両国国技館と森山直太朗というのを合わせると、髷を結っている自分の姿が見えてくるっていうくらい見えるものがあったんですよ(笑)。何か景色が広がるっていう感覚が、舞台を作る上で自分の中ではすごく大切で、だから質問されたように、確かにすべてを出し切った後ではあったんですけど、両国国技館という場所だったからこそ僕自身が見える景色、また、見せられるものがあると思ったので、そこはまったく心配していなかったです。