森山直太朗インタビュー「映像作品『素晴らしい世界』をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしい」
そういうのも含めて、不思議な力を感じる空間でしたね。だから、両国国技館ってどんな場所でしたか? って聞かれたら、パワースポットでしたっていうのが一番端的に的を射た答えですね(笑)。
『素晴らしい世界』の〈後篇〉に参加してくれたヴァイオリニストの須原杏ちゃんが両国国技館を見に来てくれて、僕にこんなことを言ったんですよ。「この両国国技館の舞台のために、これまでの101本があったんだと思った」って。それはすごくうれしかったし、一方で、国技館での『素晴らしい世界』のパフォーマンスの後に、「ああ、答えはなかったんだ」っていう場所に辿り着いたっていう、どう理解したらいいのか分からない感覚がずっとあって。つまり、ここまで長い時間をかけて回ってきて、結局得られたものは、答えなんてないという答え、というのはあまりにも酷だなっていう感覚と、同時に、もう探さなくていいんだっていう安堵の両方があったんですよね。そして、ある意味で執着を手放せたことで、表現者としては最もいい状態になれたんだなって思ったんです。それが、杏ちゃんの「このためにやってきたんだね」っていう言葉の真理なのかなって今は思います。
映像作品でしか辿り着けなかった結論がそこにはある
――最後の台北公演を記録した映像の中(LIVE Blu-ray & DVD Disc 2に収録)