森山直太朗インタビュー「映像作品『素晴らしい世界』をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしい」
と言ってもいいかもしれないですね。映画ではそのときの音声が使われていましたけど、病院で父と母と僕が一緒にいるって気づいた瞬間、ホラー映画かなって思いました(笑)。「うわ、みんなでいる!」って。そこの、家族という視点だけで切り取ってみたら、僕は40年もの間、ずっと来ないバスを待ち続けている幼いままの自分がいるわけですよね。でもその空白があったからこそ、また視点を変えて見れば、僕は曲を書けたんだと思うから、一概に「空白」とは何か? という答えも実はないんですよね。でも、僕の中にあるふたつの「空白」......つまり、表現者としてのものと家族のものと、そのふたつがリンクしているのが『素晴らしい世界』という旅だったような気がしています。最後に父の死が含まれているということも。
両国国技館で「素晴らしい世界」を歌った後に感じた、「もう探さなくていいんだ」っていうひとつの結論と、父の死に際して3人でまた一緒に過ごせたけど、それまでの40年という空白が決して無きものにはなってないという現実が、複雑な模様で入り混じっているというか......決してハッピーエンドという感じではなかったじゃないですか? 特に映画は。