森山直太朗インタビュー「映像作品『素晴らしい世界』をきっかけに、見た人がそれぞれの中にある何かを考えるきっかけになってほしい」
人が何かの真実に辿り着くためには、自分の中に潜んでいる深い闇にじっと目を凝らさなきゃいけないんだっていう厳しい現実と、でもどこかで「良かったね」っていう思いが交錯している、その複雑さを色にするなら真っ白なんですよね。だから、最後は白い世界で終わりたかったんです。そこに、見ている人の様々な思いや問いをどんな色でもいいから垂らしてほしい......そんなふうに思いました。
――森山直太朗というひとりの人物が抱えている空白は、視点によってそれが空白かそうじゃないかが変わるというのはとても面白いですね。
そうなんですよ。その空白こそが一方で自身のアイデンティティになっているっていうことなんですよね。Blu-ray & DVDのブックレットに寄せた文章の中でこんなことを書いているんです。それは......自分がなぜ音楽を始めたのか? ということへの洞察です。
母親が音楽をやっているがために僕は愛情を奪われたように感じていたから、音楽を毛嫌いし遠ざけていたはずなのに、なぜ音楽を選んだのか? 振り返って考えてみたら、父と母の唯一の共通言語が音楽だったんですよ。音楽を通して知り合った彼らが、別れたとしても......それがどんなにきつい別れ方だったとしても......僕が音楽をやっているっていうことが、何かふたりのつながりになるんじゃないかって、そういう思いが心の奥の方にはあったんですよね。