大島渚賞に輝いた小田香監督、新作『セノーテ』では神秘の泉の世界へ
また、日本に戻ってきて少し映像をまとめたんですけど、それをみたときにもう少し掘り下げたい気持ちが出てきました。
そこで、もっとプロジェクトとして続けたい、何年か続けて現地を撮影したら映画になるかもなと思って、本格的に取り組もうと心に決めた気がします」
そこから小田監督はあまり泳ぎが得意ではないにもかかわらず、泉の撮影を想定してダイビングのライセンスを取ったりと下準備を整え、2年ほどの間に3度の現地撮影を敢行。
完成した作品は、神秘の泉の底へとカメラが入っていく。その一方で、現地で生きる人々のポートレイト的な顔の映像や、マヤ演劇のセリフやマヤ語、現地の環境音を採収。そうした映像や音声が混然一体となってこちらへ届いたとき、滅亡したマヤ文明の苦難の歴史やマヤの人々の文化、セノーテという泉に広がる世界がわかに浮かびあがってくる。
小田監督自身は現地でどんなことを感じていたのだろうか?
「セノーテによってかなり違います。神聖さを感じるところは、やはり水の中へ潜らずに水面を浮いているだけでもひとりでいると、なにか起きるんじゃないかと、畏れを感じる瞬間がある。一方で、もう入場料をとって、更衣室やシャワールームを用意して遊べる観光地化されたセノーテもある。